精索静脈瘤発生の仕組み

精巣から出て行く血液は、主に性腺静脈を通って心臓に向かいます。そして、多くの場合、右は下大静脈に、左は左腎静脈に流れ込みます。この解剖学的特徴の違いが、左側に多い原因となっています。

多くの場合、左性腺静脈は左腎静脈へ直角に合流します。例えて言えば、交通量の多い片側3車線の太い幹線道路に、細い路地から左折で入ろうとするイメージです。 入りにくいのでよく渋滞が起こりますよね。つまり、左性腺静脈は、解剖学的特徴により血液がうっ滞(停滞)しやすくなっています。

また、日常生活では立ったり座ったりしているとき、下半身からの静脈の血液は重力に逆らって下から上に流れています。このため、静脈には逆流を防ぐための静脈弁があります。ところが、左性腺静脈は逆流を防ぐはずの静脈弁が不完全であることが多いため、逆流が起こりやすくなっています。

日常生活で、寝ているとき以外の、立ったり座ったりしているときには、常に重力による下向きの力がかかります。また、おなかに力が入るときにも下向きの力がかかります。もともと静脈弁が不完全な左性腺静脈の左腎静脈への流入部で停滞している血液に、長時間の立ち仕事や座り仕事で持続的に下向きの力がかかると、逆流防止弁が下向きの力に負けてしまい、逆流が起こってしまうということになります。

ちなみに、右性腺静脈は腎静脈より太い下大静脈へ斜めに合流します。例えて言えば、インターチェンジから高速道路の本線に合流するイメージです。わりとスムースに流入できるため、逆流が起こりにくく、右には精索静脈瘤が少ないのです。ただ、右性腺静脈が右腎静脈に合流していることもあり、その場合は逆流も起こりやすく、精索静脈瘤も発生しやすくなります。

結果として、血液は精巣まで逆流するため、陰嚢内の血管が蛇行し、「ミミズのような血管のふくらみ」として触れるようになります。